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exhibition

Capillary Drift

日本に根ざした美意識や、長い時間をかけて培われてきた伝統的な技術を、現代の視点から捉え直し、国内外へ広く伝えることを目的とした、和紙生産者、染色職人、デザイナーによるマテリアルリサーチプロジェクト。一見交わることのない三者の実践は「繊維」という共通項を軸に結びついている。約2年にわたるリサーチの中で、デザイナーは和紙の原料である梶の木の採取から関わり、繊維がほぐされ、漉かれ、紙として立ち上がるまでの一連の工程を身体的に経験した。素材の性質、職人の身体感覚、道具、工程に着目することで、受け継がれてきた技術を新たな視点から読み解いている。和紙が持つ長い繊維構造は、単なる支持体ではなく、液体を導き、滲ませ、留める「構造体」として機能する。本プロジェクトでは、和紙職人と染色職人が蓄積してきた知識や経験に対し、デザイナーがその関係性と現象を読み解き、異なる専門性を横断しながら、技術を次の表現やものづくりへとつなげ、その新たな可能性を提示する試みである。

overview

本展では、これまで明確に交わることのなかった「和紙」と「染め」を接続し、毛細管現象(capillary action)によって生じる染料の漂流=Driftを可視化する。和紙を単なる平面としてではなく、「繊維の集合体」として捉え直すことで、その内部を染料が移動する現象そのものを表現へと展開した。繊維の隙間を移動する染料は、素材の密度や方向、重力、時間などの条件によって予測できない軌跡を描き、制御と偶然のあいだに固有の痕跡を残していく。それは、完成した色や模様だけではなく、染料が移動した時間やプロセスそのものを内包した像でもある。2000年以上にわたり受け継がれてきた「紙=繊維の集まり」という原初的な構造に立ち返りながら、和紙、染色、デザインという三者の技術と視点を横断し、素材そのものが持つ現象を引き出すことで、マテリアルの可能性と表現の領域を切り拓く試みである。それぞれの知見と技術が交差する中で、コントロールとアンコントロールの狭間に、新たな表現が立ち上がる。

member

谷口弦は、日本・佐賀県に現存する唯一の和紙工房で、江戸時代より300年以上続く「名尾手すき和紙」の七代目として家業を継承。伝統を守りながら作家としても活動を行っている。原料となる梶の栽培をはじめ、原料加工から紙漉き、納品に至るまで、すべての工程を一貫して手がけている。大道くららは、東京都内で創業117年の歴史を持つ染工場「株式会社 内田染工場」にて、国内外のファッションブランドをクライアントとするテキスタイル染色職人として、染色作業および技術開発に従事。染色作家としての活動も並行して行っている。狩野佑真は、実験的なプロセスを通して素材の可能性を探究し、プロダクトデザインから空間、マテリアルリサーチまで、領域を横断して活動するデザイナーである。異なる専門性を持つ三者が「繊維」という共通項を軸に、それぞれの素材への知見と技術を交差させている。