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2025.11.09 Award

alter. awards発表!国際的に活躍するコミッティメンバーはどんなプロダクトを評価したのか?

2025年11月7日から9日まで開催されたalter.は、無事閉幕しました。会期中、会場ではコミッティメンバーが最も注目したプロダクトを選定する「alter. awards」も発表。MoMAやポンピドゥー・センターなど国際的な機関で活躍するコミッティメンバーたちは、いったいどんなプロダクトを選んだのでしょうか? 各メンバーのコメントとともに、alter. awards受賞作品を発表していきます。

Unseen Objects selected by 中村圭佑

alter.の取り組みは既存の枠組みを見直し、越境し、今後の進むべき道を照らしていくこと。それを目的としたものであると考える。参加している作家のチーム作り、そして表現からもその「越境」を存分に感じられた。ただ越境することと同時に、越境していくバランス感が非常に重要でもある。越境しすぎてしまい主体性を失い、伝えるべきこと自体もボケてしまう恐れもある。we+のアプローチは、そのバランス感が絶妙であり、ものづくりの柔軟性を強くシンプルに表現されていた。シンプルで控えめな表現でありながらも、これからの未来に重要な思考であると共感した。これこそが越境だと。

ALL CLAMP selected by Kristen de La Vallière

ALL CLAMPは、創作の主体性をユーザーへ還元することで、デザイナーやつくり手、エンドユーザーといった従来の区分を変えようとしています。モジュラー式の接合システムとして、ALL CLAMPは廃材や日常的な材料から機能的な形態を構築することを可能にし、創造的な主体性とともに、その責任もユーザーに委ねます。そうすることで、デザインを即興性や再利用可能性、空間との対話へと開いていきます。なかでも最も説得力をもっているのは、その応答性です。ALL CLAMPでつくられたオブジェクトは、ユーザーの新体制や建築的な文脈、日常生活のなかで変化する要求に合わせて、変化することが可能です。このデザインロジックは、日本の建築的な伝統とも共鳴しています。日本建築の空間は暫定的で応答的であり、機能が固定されるのではなく時間によって変化していきます。

コンパクトで軽量、入手もしやすいALL CLAMPは、アクセシビリティによってデザインの民主化を進めてもいます。同時にこのプロダクトは、より緊急性の高い問題を提起してもいます。それは、サステナビリティと個人のエンパワメントを通じて物質文化を再考することです。彼らは単一の解決策ではなく、システムを提供します。それは空間とより意識的に向き合い、暮らすことへの招待なのです。

ALL CLAMPは、alter.のキュレーション基準──「美的な明快さ」「機能的な知性」「表現としての革新性」──をすべて満たしています。彼らはデザインをプロダクトに落とし込むのではなく、参加型で進化しつづけるプロセスへと拡張しているのです。

ALL CLAMP selected by FormaFantasma

ALL CLAMPは、ひときわ目を引くプロジェクトでした!若手デザイナーたちが伝統的な木工技術である継手の技法に着目し、そこにまったく新しい解釈を与えています。彼らは建設現場で普通に見かけるような建築資材を使用し、それらを椅子やランプ、テーブルといった美しく機能的なオブジェクトを生み出しています。彼らのアプローチは正直で飾り気のないものなのですが、同時に完成したプロダクトは驚くほど洗練されていると感じます。展示デザインにもこのアイデアが反映されており、建設中であることと完成されていることの境界線を曖昧にしています。それはプロセスとプロダクトの巧みな融合であり、alter.の実験的な精神を完璧に捉えているものだと感じました。

HAMA Reimagined selected by Tanja Hwang

HAMA Reimaginedは、通常であれば廃棄されてしまう陶磁器の副産物を視覚的に魅力的であり機能をもったオブジェクトへと変換することで、サステナビリティに対する革新的なアプローチを実現しています。特別に開発されたエレメントは、一つひとつ手づくりされたさまざまなサイズのハマに適応し、多様な構成をとりさまざまな用途へ対応するモジュラー式のシステムを生み出しています。HAMA Reimaginedはローカルで伝統的な陶芸の文化に根ざしているが、その方法論はほかの工芸にも展開できる可能性を秘めており、グローバルな広がりをもつ意義深いモデルだと言えるでしょう。

HAMA Reimagined selected by Olivier Zeitoun

HAMA Reimaginedは、通常見過ごされがちな工芸の副産物へ光を当て、制作プロセスのなかで革新的に活用しています。デザイナーたちは微細で通常は目に見えない痕跡を活性化させることで、これらの「廃棄物」の価値を見出し、素材の探求を展開しながら、ローカルとグローバル双方の課題へと結びつけています。多様な分野の専門家たちによるコラボレーションが、伝統的な生産を再定義し、古くから続く技法と現代的な用途を融合させることで、工芸に新たな光を当て、再考を促しています。

このランプはプロダクトとその起源となる土地の繊細なつながりを体現するものであり、現代の文化や技術に合わせた形で表現されたものでもあります。また、それは感情や物語を喚起する豊かさも備えています。このプレゼンテーションは完成しているものの、静的なものではありません。この考え方を受け入れることで、文脈を問わず、さまざまな未来の応用可能性を示してもいるのです。


なお、次回alter.は2026年10月末に開催が決定しました。今後も本ウェブサイトでは会場で行われたトークセッションのポッドキャストを配信していくほか、今回の開催を記録した書籍も出版予定です。これからも本ウェブサイトを通じて情報発信を続けていきますので、ぜひ来年のalter.にもご期待ください。