ものを輸送する際、対象物の保護を目的に行われる梱包作業。手紙サイズから大型の精密機器まで保護の仕様は実に様々です。破損防止や天地の設定をはもちろんのこと、防水、冷蔵、スピードの上限、それが美術品であるならば採寸による適切なクレート制作を行うことも珍しくありません。
海外輸送ともなると、距離や経路を加味したより厳重な梱包作業が必要になるのですが、日本は極東の島国という立地上、他国に比べて輸送コスト高はどうしても避けられません。そのため輸送費削減に適した合理的解決(軽量化・小型化・組立構造)と審美的価値の両立を歴史的に実践してきたわけですが、ユニークピースである美術品においてはそう簡単な話でもないのです。
本展project: paiking listは、立地的な宿命を背負った私達の「送り方」を起点に、輸送システム自体をものづくりのプロセスとして内包できないかを検証していきます。
昨年台湾でおこなった展示"tracing"では、メンバーの各作品を内容物として梱包と輸送の作品化を実践しました。梱包自体にもプロダクトとして副次的な機能性を与え、輸送痕(掠れやラベル張りも含む)を加工プロセスに変換するという内容でした。その結果を受けて今回立ち上げたのが、長期的なチームプロジェクトproject: packing listです。
2作目として位置付ける本作"looping"では、BtoBの輸送形態や流通の歴史的背景にもフォーカスしながら「送り方」に迫りたいとおもいます。
MULTISTANDARDは、社会が求める最適解を提示するのではなく、新しい視点をツールとして機能させ、アイデアに形を与えることを主眼として活動しています。
複雑な現代社会においては、定説的なスタンダードの実像を共有することよりも、多視点な議論を促進させ、知見の限界を押し広げることが重要だと考えているからです。
そのために、マテリアルやプロセス、コンテクストを見つめ直し、デザインの手がかりを模索し続けています。今回は「packing list」というタイトルを掲げ、
フォワーダーの井上智昭、石工職人の髙橋輝、家具デザイナーの大嶋洋二郎をコラボレートメンバーとして迎え、国際的な輸送の知見や、
ローカルに根ざした輸送の技術から思考を巡らせます。そして全体のグラフィックデザインをスダンリー・シンが統括します。