自己の内から湧き起こる野生と、土地の風土や風景・素材・人間関係など自身を取り巻く環境との共鳴から立ち現れる「生きた創造」。これが我々が実践する創造のあり方である。
いま、デザインの活動は都市から地方へと拡張し、地域と根でつながったクリエイティブが新たな価値を育んでいる。京都や福井を拠点とする我々もまた、それぞれの領域から地域を見つめ、触れ、自らの血肉に変えながら制作を続けている。その実践は既成の枠組みを揺さぶり、都市と地方、さらにはグローバルを横断して創造性を更新するはずだ。細胞のように自律しつつも連鎖するこの姿勢こそ、都市のデザインに新たな問いを投げかけるものであると信じている。我々はこの営みをひとまずは“Live Phenomenon”と呼ぶ。
本展示は、我々の創造性のあり方"Live Phenomenon"を、身近で普遍的な存在である椅子に宿す試みである。
椅子は身体を支え、関係性を形づくり、日常と創造性を結ぶ象徴的なオブジェクトだ。
展示では、暮らす土地の心象風景を映した写真を椅子とともに置き、空間そのものをひとつの風景として立ち上げる。
その一脚ごとに異なる風景は、地域や世代を越えて多様な創造のあり方を映し出すだろう。誰もが触れ、座り、身体で呼応できる椅子だからこそ、そこに立ち現れる「生きた創造」を、来場者とともに分かち合いたい。
福井を拠点に活動する「閃」は地域文化や素材を起点に新たな価値を探るチームで、今回は4人のメンバーが参加。京都を拠点に活動する「SIBO」は異なる専門性を活かし多様な視点でクリエイティブを行う5組のユニット。拠点や専門性は異なるものの、全員が20代後半から30代前半の同世代であり、クリエイターとして共通する創作姿勢を本展で交差させる。