鋳造とは本質的に、変化をもたらす行為です。そこには実用性と物語性が重なり合い、化学、素材、そして職人技がひとつになって、まだ見ぬ何かを形づくるために動き出します。その過程は、つねに予測できない結果が潜むジェットコースターのようでもあります。定められた工程を踏みながらも、素材と技法に向き合うなかで、思いがけない何かが立ち上がってくる——それが鋳造の奥深さなのです。完璧さを追い求めるこの時代に、Unseen Objectsは静かに異議を唱えます。美とは決して磨き上げられたものだけに宿るわけではありません。ひび割れの中に、残された痕跡の中に、そして手の跡が刻まれた不完全なかたちの中にも、美しさは静かに息づいているのです。——デザインキュレーター・作家 マリア・クリスティーナ・ディデロ
Unseen Objectsは、we+と富山県高岡市の鋳物会社平和合金のコラボレーションプロジェクトです。鋳物の製造過程で見られる道具や治具、素材の質感や偶発的な造形など、これまで見過ごされてきた鋳物文化の舞台裏に着目。高度な鋳造技術の本質を作品へと昇華することで、鋳造文化の魅力を伝えながら、その価値を再発見、再定義することを試みています。we+が平和合金の鋳物工場を幾度となく訪ね、鋳造プロセスを丁寧にリサーチ。工場で日々生まれながらも見過ごされてきた魅力に焦点を当て、2025年のMATTER and SHAPE(パリ)、Milan Design Week(ミラノ)、DESIGNART(東京)にて花瓶のコレクションを発表しました。alter.では、新たに工場からピックアップした端材や道具を起点にオブジェへと昇華。プロジェクトの新たな可能性を探ります。
リサーチと実験に立脚した手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也と安藤北斗により2013年に設立。利便性や合理性が求められる現代社会で、見落とされがちな多様な価値観を大切にしながら、オルタナティブなデザインの可能性を探究している。自主プロジェクトを国内外で発表し、そこで得られた知見を生かしてさまざまな企業や組織のプロジェクトを手がける。近年は「Nature Study」「Urban Origin」「Hidden Layers」といったリサーチプロジェクトに力を入れている。作品は、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムなどに永久収蔵されている。