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デザインイベントは本当に必要か?alter. 2025, Tokyoアーカイブブック刊行記念イベントレポート

april 23, 2026

昨年11月に行われたalter. 2025, Tokyoのアーカイブブックが、4月26日に刊行されました。発売に先立ち、alter.は4月7日に東京・表参道のCIBONEで刊行記念イベントを開催。会場では「alter.とは何だったのか──「デザインイベント」の限界とその先にあるもの」と題し、昨年のコミッティメンバーでもある設計者の中村圭佑とバイヤーの山田遊、alter.ファウンダーの武田悠太によるトークセッションが実施されました。果たしていま東京でデザインイベントを行う意義はどこにあるのか? alter.への批判も含め、デザインイベントの価値を考えなおすトークの模様をお届けします。

デザインイベントは変わっていない?

武田悠太(以下、武田) みなさん今日はよろしくお願いします。おふたりから忌憚のない意見をいただきながら、今年10月に開催する第2回をよりよいものにできたらと思っています。

中村圭佑(以下、中村) よろしくお願いします。本音で話してくれと武田さんからリクエストをもらっているので、今日は楽しみです。

山田遊(以下、山田) そもそもぼくは自分のイベントと完全にスケジュールが被っていてalter.を観に行けていないんですが、大丈夫でしょうか……(笑)。ただ、もともと武田さんからお話は伺っていて、何かこれまでとは異なるイベントになるような印象を受けてはいました。というのも、ぼく自身ずっとデザイン業界に身を置くなかで、デザインイベントがまったく更新されていないと感じていたんですよね。ミラノサローネにせよ3daysofdesignにせよ大枠は変わらないと思いますし、デザインイベントのあり方って数十年間あまり変わっていないのではと思っていました。

武田 さまざまなイベントを見ていても、クオリティは高いものの、プレイヤーが固定されて均質化してしまっているような印象があって。しかもプロダクトやインテリアはモノをつくるためにお金もかかるので、若いデザイナーが新たな表現にチャレンジしづらい状況が生まれてしまっている気がしました。

だからalter.では異業種のクリエイター同士でチームを組んで新しいプロジェクトを提案してもらう機会をつくり、出展料をもらうのではなく最大300万の制作補助を行うことにしたんです。いままでつくってきた作品を並べるのではなく、新しい表現をプロトタイピングすることを重視していました。

第1回を終えて、まだまだアップデートできる部分はたくさんあると思うんですが、alter.への出展を通じて新しい仕事につながった方がそれなりにいらっしゃったみたいで嬉しかったですね。

プロダクトだけでなく体験を設計する

中村 ぼく自身、亀有で「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」という場を運営しながらプロダクトを扱ったり展示を企画したりするなかで、プロダクトそのものだけでなく周囲の環境や付随する情報も含めた体験全体の価値を設計することが重要だと感じていて、alter.の姿勢にも共感していました。

ただ、会場や展示について正直に言えば、もっと別の可能性があったのかもしれないとも思います。もちろん商業施設の中でこうしたデザインイベントを行う難しさも理解していますが、たとえばミラノのフォーリサローネなどを見ると場の面白さが設計されたうえでプロダクトと対峙できる体験が生まれるようになっている。商業施設であることを逆手に取って建物全体でシナジーを生み出すなど、プロダクトを見るだけではないワクワクする体験をつくれた可能性について考えてしまいましたね。

山田 ぼく自身も商業施設のホールでイベントを行った経験があるのですが、難しい部分はありますよね。今回はホールの床一面に青いカーペットを敷いていましたが、オルタナティブな場をつくるという意味では、この空間の解釈も含めて各プロジェクトに任せるような選択肢もあったんじゃないかと思いました。

武田 おふたりとも率直な意見をくださりありがとうございます。ぼくたちもなるべく空間をいじらずクリエイターに渡そうと思っていたのですが、事務局内で検討するなかで空間全体の印象を変えるために青い床だけ敷くことにしたんです。

中村 結果として、出展者が空間から設計するというより、ひとつの空間の中にいろいろなプロダクトが配置されているような場になってはいましたね。

武田 今回は構造から空間を立ち上げるようなプランが少なかったので、そう見えてしまった部分もありますね。もちろん、alter.としてはクリエイターが主体となって場をつくっていくことをサポートしていきたいので、次回はクリエイターの方々からもっと自由に提案をいただけるような状態をつくれたらと思います。

中村 自由すぎるのも難しいとは思うので、制約や条件も含めたディレクションをもう少し具体化できていたらよかったかもしれません。コミッティの自分としても反省するところですね。

枠組みも国境も超えた連携を目指して

山田 alter.のコミッティメンバーは素晴らしい方々が集まっていると思うんですが、欧米の美術館やメディアの方ばかりなのが個人的には気になりました。去年インドネシア・バリのデザインイベントに行ったんですが、必ずしも洗練されているわけではないものの、勢いがあってすごく楽しかったんですよね。デザインイベントというとすぐミラノやコペンハーゲンの話になるわけですが、日本や東京でやるならヨーロッパのものを焼き直すだけでは意味がないような気もしています。日本や東京で開催する意義を考えることは重要ですよね。

武田 ぼくがalter.とは別に主催しているEASTEAST_というアートフェアではアジアのアーティストやギャラリーを招いたプログラムも実施しているのですが、プロダクトデザインの領域においてどれくらいアジアへフォーカスできるのか悩んではいました。まだ少し早いのかもという印象があって、いまのところ欧米寄りのラインナップになっていることは事実です。

中村 アジアにはいますごくチャンスがあると感じていますし、クリエイター同士でもっとスケールの大きなものをつくっていける時代になっていると思うので、グローバルな連携がもっと活発になってほしいですね。

山田 横のつながりが増えるといいですよね。ぼくも自分で「(PLACE) by method」というギャラリーを10年以上運営するなかで、中村さんのSKACも含め同じような問題意識をもつスペースが増えている実感もあるものの、ただバラバラに活動するだけだとクリエイターも摩耗していってしまう気がしています。表面的には展示のチャンスが増えているかもしれないけれど、それは本当に機能しているのか。自分も場所を運営する立場として、もっと連携していく必要を感じます。

武田 クリエイターをサポートする気持ちは共通しているわけで、たしかに連携した方がいい局面は多そうですね。

山田 デザインイベントというフォーマット自体も、いまの時代に合っているのか考えなおしてみてもいいのかもしれません。特に最近はイベントが都市に回帰してきているような印象を受けていて。昨年の大阪・関西万博の盛り上がりもそうですし、5月に開催される「東京建築祭」もたくさん人が集まる場が生まれている。先ほど中村さんが仰っていたように、プロダクトそのものだけでなくその周辺の状況に何か新しいものを提示できたらとは考えています。

中村 実はぼくもデザインイベントの意義については疑問に思うことがあって。大きな“花火”を一発だけ打ち上げるような短期間のイベントではなく、毎日表現を行える場があったほうがいいんじゃないかと思うんです。今回はalter.にコミッティという形で参加しましたが、ひとりのクリエイターとしては、もはやイベントにフックアップされるのを待っているだけではダメだと考えています。

だって、alter.に文句があるなら自分自身で場所や機会をつくったっていいわけです。むしろデザイナーはもっと積極的に動いて表現していかなければダメだと思う。SKWATやSKACといったぼくの活動は、そんな危機感から生まれたものでもあります。

武田 文句も言っていただいてぜんぜん大丈夫ですよ(笑)。

中村 もちろん、alter.のようなイベントも大事だと思っています。こういった枠組みがあることでシーン全体が底上げされる側面もありますし、日本のデザインシーンを考えるうえでも非常に重要ですから、デザイナーとしてはどちらのアプローチも頑張っていかなければいけないですね。

武田 ありがとうございます。alter.としては、批判も含めてさまざまな意見を受け止めながら第2回に向けた準備を進めていくつもりです。会場に関する要望はもちろんのこと、会場外に展示を拡げていくようなチャレンジも含めて、ぜひ参加いただくクリエイターのみなさんからは自由に提案をいただけたらと思います。