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2025.11.04 Project

総勢50名以上のクリエイターが参加!11のプロジェクトが生み出す新たなプロダクトの可能性

今回alter.では、コミッティによる審査のもと採択された11のプロジェクトが展示されます。各プロジェクトには、写真家やダンサー、建築家などプロダクトデザイナーのみならずジャンルを超えたクリエイターが参加。その数は総勢50名以上にのぼります。それぞれバックグラウンドや活動形態も異なるクリエイターたちは、alter.の会場でどのようなプレゼンテーションを行うのでしょうか。いよいよ開催が迫るなか、全11のプロジェクトをご紹介していきます。

ALL CLAMP

クリエイティブプロダクション「KIENGI」を率いる板垣勇太やデザイナー/アーティストの太田琢人らが集まるコレクティブ「function」による本プロジェクトは、撮影現場で頻繁に利用される「クランプ」に着目したもの。ALL CLAMPとして提案されたこのシステムは、木材、金属、廃材、既製品など、異なる背景や文脈をもつ素材を横断的に接続することで、家具や什器などさまざまなプロダクトを生み出すもの。プレゼンテーションにおいてはパーティションや照明、サインもこのクランプシステムによって構成され、展示の終了とともにコンポーネントは分解されていきます。本プロジェクトは「かたち」を新たに生み出すのではなく「関係」を組みなおすことで新たな意味や機能を立ち上げており、クランプの「掴む」という原始的な行為によってデザインの可能性を拡張しています。

Bent Pipe Clamp

本プロジェクト「Bent Pipe Clamp」は、写真家の川谷光平と彫刻家の石崎朝子、キュレーターの原ちけいの3名が集まり、クランプを起点として既存のプロダクトデザインとは異なる観点からスタンドを制作しています。このプロダクトは垂直に動くシャフトを備え、さまざまなアイテムを緩く固定することを可能にします。このプロダクトはモノを挟み込むことで写真がもたらすフレーミングのような効果をもたらすものであり、彫刻的な台座のようにも機能します。会場では、枕やボールなど馴染みのある日常的なモノがいくつも挟まれた状態で展示されていきます。クランプによって挟み込むことで、私たちは見慣れたモノが写真的・彫刻的なプレゼンテーションに組み込まれていくさまを感じとることになるでしょう。

Doji Fetish performance

Doji Fetish performanceは、杉野龍樹が率いるDODIの家具作品をもとに音楽や映像を扱うアーティストらが参加することでインタラクティブなプロダクトを提案。柔らかい発泡ウレタンが注入されたソファには手形や汗といった痕跡が残されており、そこに座る鑑賞者は否応なくかつてそこにいたかもしれない他者の存在や時間を意識されられることとなります。会場に置かれたソファには来場者とのインタラクションを引き起こす仕掛けが施されており、自己と他者や主客の境界線をないまぜにしていきながら、来場者自身が一時的に家具となるような体験を創出していきます。

HAMA Reimagined

Photographer:壱岐成太郎

テキスタイルデザイナーの光井花を中心に5名のクリエイターが集まったプロジェクト「HAMA Reimagined」は、磁器の焼成中に器を支えるために使われる台座「ハマ」をプロダクトとしてデザインしなおすもの。ハマは磁器によって形が変わるため毎回手づくりで生み出されており、収縮に強く非常に耐久性が高い一方で、加工には向かないため再利用する方法が模索されていました。そこで本プロジェクトは有田焼の作家をメンバーに招き、ハマを再解釈することで新たな活用方法を提示しています。それはこれまで廃棄されてしまっていたハマを新たに循環させる取り組みであり、これまで見過ごされてきたプロダクトに光を当てるものだと言えるでしょう。

Live Phenomenon

福井を拠点に地域文化や素材を起点に新たな価値を探るチーム「閃」と京都を拠点に活動する「SIBO」、異なるバックグラウンドをもつ2つのコレクティブから計9名のクリエイターが参加するプロジェクト「Live Phenomenon」。都市部だけに閉じず土地の風土や風景・素材・人間関係などを重視してきた彼らは、地域に根ざし細胞のように自律しつつも連鎖を生み出すような創造形態を「Live Phenomenon」と名づけました。今回は椅子を主たるプロダクトとしながら、暮らす土地の心象風景を映した写真を椅子とともに置き、空間そのものをひとつの風景として立ち上げていきます。それは地域とつながったクリエイティブの価値を提示するものでもあるでしょう。

OMOIYARI PROJECT

インダストリアルデザイナー・高野潤を中心に、医療機器メーカーのプロダクトデザイナー・宇佐美雅司とインテリアデザイナー・稲垣直秀が参加する本プロジェクトは、医療用器具「ステント」から着想を得た照明を提示するもの。精密に加工されたメッシュ状のステンレスからなるステントは本来医療にしか使われないものですが、本プロジェクトはそこにプロダクトとしての美を見出しました。人の命を救うためにつくられた医療器具に込められた「思いやり」から着想を得たメンバーたちは、複数の照明インスタレーションを展開。ステントを素材とした作品からその美しさからインスピレーションを受けた人工の花、生命の鼓動や息吹を象徴する照明など、存在そのものが思いやりのやさしさを帯びたプロダクトが会場に並んでいきます。

packing list

秋山亮太を中心とするデザインコレクティブ「MULTISTANDARD」が率いるこのプロジェクトは、輸送と梱包という行為をデザインするもの。美術品など貴重なものを輸送する際はしばしば内容物が破損しないよう精密な測定のもとで輸送用の箱がつくられますが、こうしたパッケージが注目される機会は多くありません。しかし、歴史的に見れば、19世紀に日本から陶磁器が輸出される際に浮世絵がクッション材として使われるなど、梱包によって新たな作品が広がったこともあるなど、梱包は単に内容物を保護する以上の意味をもっていました。今回の展示ではBtoBの輸送形態や流通の歴史的背景にもフォーカスしながら、輸送システム自体をものづくりのプロセスとして提示していきます。

POETIC PROTOTYPING -Forms of Invisibility-

青沼優介と三好賢聖によるデザインスタジオ「Studio POETIC CURIOSITY」を中心とした本プロジェクトは、「Forms of Invisibility」をキーワードに掲げ、しばしば私たちが見過ごしてしまう微かな存在を捉える3つの作品を提示します。たとえば落ち葉の形をしたお香は栗の殻のアップサイクルによって生まれたものであり、そこから発展してつくられた枝の形をした大きなお香は籾殻からつくられ、植物の成長を逆転させるように燃えていくさまはインスタレーションとしても機能します。会場ではこれらのプロダクトが透明かつ不透明な膜によってブースが覆われ、鑑賞者は空気や匂いの微かな流れを感じとることになるでしょう。

Product and Space

視覚ディレクター/グラフィックアーティストの河野未彩と美術家の玉山拓郎を中心とした「Product and Space」は、ユニット型の照明プロダクトを提示するプロジェクト。これまでアートとデザインを往還しながら大規模展覧会やプロダクト製作に取り組んできた両者は、シンプルでミニマルな構造をもち5〜100個のユニットを自由に組み合わせられる照明システムを提案します。この照明は光のオブジェクトとして自在に変形するがゆえに個人の生活空間から大規模なインスタレーションまで、さまざまな用途に対応可能。展示会場ではパフォーミングアーティストのアオイヤマダがこの空間で披露したパフォーマンスの映像も公開され、本プロダクトのもつ多様な可能性が提示されます。

Unseen Objects

「Unseen Objects」は、林登志也と安藤北斗が設立したコンテンポラリーデザインスタジオ「we+」と富山県高岡市の鋳物会社平和合金によるコラボレーションプロジェクトです。鋳物の製造過程で使用される道具やそこから生まれた偶発的な形に着目し、平和合金の鋳物工場を幾度となく訪ね、鋳造プロセスを丁寧にリサーチしながら工場で日々生まれながらも見過ごされてきたものをピックアップ。それらを3Dスキャンしたり型をとったりしながら新たなオブジェクトへと生まれ変わらせます。本プロジェクトは完璧なプロダクトを追い求めるのではなく、むしろプロダクトの製造工程から生まれるミスや残余物のなかに新たな美しさを見出すものだと言えるでしょう。

Voidbark

静岡を拠点とするOTHER DESIGNの西田悠真らが率いる「Voidbark」は、樹皮を新たなプロダクトへと変えるプロジェクトです。樹皮は水分と栄養分を蓄えて樹木を保護する機能をもっているものの、樹木が伐採され素材として利用される過程で不要なものとして廃棄されてきました。本プロジェクトは動きが予測不能で産業的に扱うことが難しいこの樹皮を現代の技術と伝統的な木工の知を組み合わせることで、新たな美を見出しプロダクトへと生まれ変わらせます。工業的な折り曲げ技術や樹脂の活用を通じて樹皮の強度を上げるとともに、多様な形の保持を可能にすることで、照明や椅子などさまざまなプロダクトへ樹皮を組み込んでいます。それは伝統工芸や民藝のような魅力を保ちながら、新たな素材を提案することでもあると言えるでしょう。